十人くらいは余裕で入れそうな风吕を満吃して出た花道は、棚と笼しかない脱衣所で念っていた

　取り敢えず上は着たものの、下着をどうすべきかで悩んでいるのだ。

（置いてあるっつー事は使えってことなんだろーけど、いくらなんでもなー

　确かに、风吕入ったら一度脱いだのは穿く気は起きねーけど、とゆー事はつまり、俺様の下着も洗ってもらっちまうってわけか？

　それはなーどうなんだ？）

　いくら、信长の好意に甘える覚悟を决めたとしても、そればかりは悩む

　これが亲友宅なら今更远虑する事もないが、さすがにお邪魔したばかりの家ではどうかと思うのだ。

　悩む花道の背后で突然ガラリと扉が开いて、

「―――何やってんだ、お前」

　颜だけで振り返れば、呆れた顏の信长が立っている

「あんまりおせーから、のぼせたんかと见に来てみれば???、何念ってんだ？」

「いや、下着をなどうしようかと」

「はー？　出しといただろ

　新品のだからてめーにやるよ」

「ぬ？　そうなんか」

　きょとん、と瞳を瞬くが、途端にニヤリ、と意味深な笑みが返って、

「???别に、返してくれてもいーけど」

　ふと色を深めた紫の瞳に、何故だか居たたまれないような羞耻と、思いっきりよくない予感が袭う。

　慌てて黒いトランクスを身につけてズボンを穿けば、必死なその様に、声を立てて信長が笑った

　堪え切れない、というように腹まで抱えているのがなんだかムカツク。

「ぬ、笑うな、この野猿っ！」

「???っくくはいはい。

　あ、メシできてっからさ来いよ」

　羞耻を误魔化そうといきり立ってみるが、さらり、とそれを流されて、逆に手を取られてしまう。

　むっとしながらも、そのまま歩き出した背中にまたおとなしく着いて行きかけて、

　握られた手を强く引いて引き圵める

　それから、怪讶そうに振り返った信长を半眼で睨みつけながら、ビシリ、と指差し、

「てめー、またグルグルよけーに廻って、俺様であそぼーとか思ってねーだろうな？」

　さっきの意図は理解したが、今度は纯粋に游ばれる可能性がない訳ではないむしろその可能性大だ。

　そう思っての牵制に、けれど相手は、ぱたぱたと片手を振って笑って、

「思ってない思ってない

　だってオレ、腹减ったもん」

「だって、结局昨日は、てめーに付き合ってそのまま寝ちまっただろ？　つまり昨日の昼から食ってねーんだぜ

　だからもー、腹减って腹减って。てめーが出てくるのを今か今かと待ってたんだ

　大体てめー、今何时だと思ってんだ？　十时过ぎてんだぞ」

「―――マ、マジで」

　きっぱりと言い切られて、思わずぎょっとしてしまう。

　ただでさえ迷惑をかけているのに、そんな事にも付き合せてしまって悪いなんて思ってしまうのだ

「そ、そっか。あ、ワリぃ

　えと、先に食ってくれてもよかったんだけどよ」

「バーカ。そんなことしたらオレが母さんに怒られるだろうが」

「―――ってちょっと待て」

　はたり、と我に返って、いつの间にか歩かされていた事にまず惊く。

　けれどそれ以上に、今、何度目かの角を曲がらされたような気がするのだ

「あのさ。てめー、またいっぱい角曲がってる気がすんだけど、まさか―――」

　ぺろり、と舌を出した信长に、やっぱり！と、今度こそ花道は腕を振り上げた

「ふぬーっ！　この、野猿がっ！」

「また引っかかる方がワリーんだろーが。

　かっかっかっかっか」

　いつの间にやら追い挂けっこに変わって、どたどたと、幅広の廊下を豪快に駆け抜けて行く

　もちろん、行き先も现在地も判らない为、先行する信长の背を追うしかない。

　何度目かの角を曲がり、伸ばした手がその方に届くかと思った瞬间

　突然立ち止まったその背に、また派手に激突して停止する。

　またぶつけてしまった鼻柱が痛い

　花道の体当たりにびくともしなかった信长は、低く念る抗议の声に、ニヤリと笑って振り返り、目の前の袄を左右に开いて促す。

「ま、メシで机嫌直せよ」

「???ったく野猿めが」

　ぶつぶつと鼻をさすりながら部屋に入ろうとした花道は、ふと视线を上げて。

　正座してこちらを见ている和服の女性に気が付いて、思いっきり固まってしまった

　一気に紧张して赤くなった様を横目で见て、信长は、深く深く溜息をつく。

（下手に紧张して欲しくねーっつー、せっかくのオレの配虑も意味ねーじゃん

　っつかこいつ、女には皆こーなのかよ？）

　それなりにフェミニストではあるが、ここまで女性には弱くないと自负している信长には、花道の过剰な反応が判らない

　常々思っていたのだが、どうしてこうも无条件であがってしまうのか。

（そーいや、牧さんとか赤木とか、あーゆータイプには别の意味でよえーよなー

　なんか、妙に甘えるっつーかさ）

　それがなんだか、信长には面白くない。

　以前、偶然街中で出逢った彼と成り行きで名古屋に行った时は、自分と牧とであからさまに态度を変えられて、かなりショックだったのだ

　そのおかげで家が近所だったと判ったり、ちょっとは试合以外の颜も见られて嬉しかったけれど、悔しいものはやっぱり悔しい。

（まー、今回は、なんか无理矢理甘えさせた感じで楽しかったけどさ

　でもやっぱ、こーゆーの见ると面白くねーなー）

「???桜木。オレの母さんだ」

　お姉さんじゃなくて！！」

　何言ってんだよ。こう见えてもこの人、さんじゅう―――」

　言いかけた言叶は、突然飞んで来たお盆に后头部を直撃されて消える

「余计な事は言わなくてもいいのよ、信长」

　にっこりと、学校でも见惯れているたぐいの笑颜で谕されて、信长は、痛みを诉える头を押さえながら座布団の上に腰を落とす。

（???にしても、お盆はねーだろお盆は）

　大量の食事を载せてきたそれは、両手を広げて持つほどでかいのだ。信长のダメージのほども窥えるだろう

　とにかく早く食事をはじめようと、まだ直立不动している花道へ、ぺしぺしと己の隣の座布団を叩いて示す。

　それでようやく我に帰った花道は、慌ててぺこり、と紫に向かって头を下げ、

「あ、あのっ、天才桜木と申しますっ

　今回はご迷惑を―――」

　自分で『天才』なんつーなよ」

　がくっ、とついた肘を落としつつも、それがあまりにも『彼らしく』て、信长は笑ってしまった。

（やっぱこいつは、こうやって无駄に自信あり気なのがいいよな）

　下手にしおらしかったり、昨夜のように怯えた彼を见るよりは、よっぽど嬉しい

　彼にはずっと、こんな风にいて欲しいと愿う。

「こんにちは桜木君。信长の母の紫です」

　上品に小首を倾げて名乗る母に、とすん、と信长の隣に腰を下ろした花道は、仿うように、こくん、と首を倾げてみせる

「それ、名前ですか？」

「???そう绍介しただろーが」

（つか、女の仕草より、こいつのそれの方にドキドキするのってどーなんだ

　いや、母さんにドキドキしても仕方ねーけどさ、だからって、男にするのはやっぱおかしーよな）

　と、密かにダメージを食らっていたらしい信长は、ちょっぴり颜を赤らめつつもツッコミを忘れない。

　そんな信长に気付いているのかいないのか、彼女はころころと铃を転がすように笑って、

「うふふ仕方がないわよ。

　元々名前として驯染みがある物じゃないんですもの」

「あ、そ、そうですかすいません。

　でも、カッコイイ名前ですね」

　滞りなく进む会话に、今度は信长が、はて、と首を倾げた

「???てめー、なんも思わねーのか？」

　いや、ちょっと変わってるなーとは思うけどよ、カッコよくっていいじゃねーか」

「や、そーゆーんじゃなくて??????」

　十人くらいは余裕で入れそうな风吕を満吃して出た花道は、棚と笼しかない脱衣所で念っていた

　取り敢えず上は着たものの、下着をどうすべきかで悩んでいるのだ。

（置いてあるっつー事は使えってことなんだろーけど、いくらなんでもなー

　确かに、风吕入ったら一度脱いだのは穿く気は起きねーけど、とゆー事はつまり、俺様の下着も洗ってもらっちまうってわけか？

　それはなーどうなんだ？）

　いくら、信长の好意に甘える覚悟を决めたとしても、そればかりは悩む

　これが亲友宅なら今更远虑する事もないが、さすがにお邪魔したばかりの家ではどうかと思うのだ。

　悩む花道の背后で突然ガラリと扉が开いて、

「―――何やってんだ、お前」

　颜だけで振り返れば、呆れた顏の信长が立っている

「あんまりおせーから、のぼせたんかと见に来てみれば???、何念ってんだ？」

「いや、下着をなどうしようかと」

「はー？　出しといただろ

　新品のだからてめーにやるよ」

「ぬ？　そうなんか」

　きょとん、と瞳を瞬くが、途端にニヤリ、と意味深な笑みが返って、

「???别に、返してくれてもいーけど」

　ふと色を深めた紫の瞳に、何故だか居たたまれないような羞耻と、思いっきりよくない予感が袭う。

　慌てて黒いトランクスを身につけてズボンを穿けば、必死なその様に、声を立てて信長が笑った

　堪え切れない、というように腹まで抱えているのがなんだかムカツク。

「ぬ、笑うな、この野猿っ！」

「???っくくはいはい。

　あ、メシできてっからさ来いよ」

　羞耻を误魔化そうといきり立ってみるが、さらり、とそれを流されて、逆に手を取られてしまう。

　むっとしながらも、そのまま歩き出した背中にまたおとなしく着いて行きかけて、

　握られた手を强く引いて引き圵める

　それから、怪讶そうに振り返った信长を半眼で睨みつけながら、ビシリ、と指差し、

「てめー、またグルグルよけーに廻って、俺様であそぼーとか思ってねーだろうな？」

　さっきの意図は理解したが、今度は纯粋に游ばれる可能性がない訳ではないむしろその可能性大だ。

　そう思っての牵制に、けれど相手は、ぱたぱたと片手を振って笑って、

「思ってない思ってない

　だってオレ、腹减ったもん」

「だって、结局昨日は、てめーに付き合ってそのまま寝ちまっただろ？　つまり昨日の昼から食ってねーんだぜ

　だからもー、腹减って腹减って。てめーが出てくるのを今か今かと待ってたんだ

　大体てめー、今何时だと思ってんだ？　十时过ぎてんだぞ」

「―――マ、マジで」

　きっぱりと言い切られて、思わずぎょっとしてしまう。

　ただでさえ迷惑をかけているのに、そんな事にも付き合せてしまって悪いなんて思ってしまうのだ

「そ、そっか。あ、ワリぃ

　えと、先に食ってくれてもよかったんだけどよ」

「バーカ。そんなことしたらオレが母さんに怒られるだろうが」

「―――ってちょっと待て」

　はたり、と我に返って、いつの间にか歩かされていた事にまず惊く。

　けれどそれ以上に、今、何度目かの角を曲がらされたような気がするのだ

「あのさ。てめー、またいっぱい角曲がってる気がすんだけど、まさか―――」

　ぺろり、と舌を出した信长に、やっぱり！と、今度こそ花道は腕を振り上げた

「ふぬーっ！　この、野猿がっ！」

「また引っかかる方がワリーんだろーが。

　かっかっかっかっか」

　いつの间にやら追い挂けっこに変わって、どたどたと、幅広の廊下を豪快に駆け抜けて行く

　もちろん、行き先も现在地も判らない为、先行する信长の背を追うしかない。

　何度目かの角を曲がり、伸ばした手がその方に届くかと思った瞬间

　突然立ち止まったその背に、また派手に激突して停止する。

　またぶつけてしまった鼻柱が痛い

　花道の体当たりにびくともしなかった信长は、低く念る抗议の声に、ニヤリと笑って振り返り、目の前の袄を左右に开いて促す。

「ま、メシで机嫌直せよ」

「???ったく野猿めが」

　ぶつぶつと鼻をさすりながら部屋に入ろうとした花道は、ふと视线を上げて。

　正座してこちらを见ている和服の女性に気が付いて、思いっきり固まってしまった

　一気に紧张して赤くなった様を横目で见て、信长は、深く深く溜息をつく。

（下手に紧张して欲しくねーっつー、せっかくのオレの配虑も意味ねーじゃん

　っつかこいつ、女には皆こーなのかよ？）

　それなりにフェミニストではあるが、ここまで女性には弱くないと自负している信长には、花道の过剰な反応が判らない

　常々思っていたのだが、どうしてこうも无条件であがってしまうのか。

（そーいや、牧さんとか赤木とか、あーゆータイプには别の意味でよえーよなー

　なんか、妙に甘えるっつーかさ）

　それがなんだか、信长には面白くない。

　以前、偶然街中で出逢った彼と成り行きで名古屋に行った时は、自分と牧とであからさまに态度を変えられて、かなりショックだったのだ

　そのおかげで家が近所だったと判ったり、ちょっとは试合以外の颜も见られて嬉しかったけれど、悔しいものはやっぱり悔しい。

（まー、今回は、なんか无理矢理甘えさせた感じで楽しかったけどさ

　でもやっぱ、こーゆーの见ると面白くねーなー）

「???桜木。オレの母さんだ」

　お姉さんじゃなくて！！」

　何言ってんだよ。こう见えてもこの人、さんじゅう―――」

　言いかけた言叶は、突然飞んで来たお盆に后头部を直撃されて消える

「余计な事は言わなくてもいいのよ、信长」

　にっこりと、学校でも见惯れているたぐいの笑颜で谕されて、信长は、痛みを诉える头を押さえながら座布団の上に腰を落とす。

（???にしても、お盆はねーだろお盆は）

　大量の食事を载せてきたそれは、両手を広げて持つほどでかいのだ。信长のダメージのほども窥えるだろう

　とにかく早く食事をはじめようと、まだ直立不动している花道へ、ぺしぺしと己の隣の座布団を叩いて示す。

　それでようやく我に帰った花道は、慌ててぺこり、と紫に向かって头を下げ、

「あ、あのっ、天才桜木と申しますっ

　今回はご迷惑を―――」

　自分で『天才』なんつーなよ」

　がくっ、とついた肘を落としつつも、それがあまりにも『彼らしく』て、信长は笑ってしまった。

（やっぱこいつは、こうやって无駄に自信あり気なのがいいよな）

　下手にしおらしかったり、昨夜のように怯えた彼を见るよりは、よっぽど嬉しい

　彼にはずっと、こんな风にいて欲しいと愿う。

「こんにちは桜木君。信长の母の紫です」

　上品に小首を倾げて名乗る母に、とすん、と信长の隣に腰を下ろした花道は、仿うように、こくん、と首を倾げてみせる

「それ、名前ですか？」

「???そう绍介しただろーが」

（つか、女の仕草より、こいつのそれの方にドキドキするのってどーなんだ

　いや、母さんにドキドキしても仕方ねーけどさ、だからって、男にするのはやっぱおかしーよな）

　と、密かにダメージを食らっていたらしい信长は、ちょっぴり颜を赤らめつつもツッコミを忘れない。

　そんな信长に気付いているのかいないのか、彼女はころころと铃を転がすように笑って、

「うふふ仕方がないわよ。

　元々名前として驯染みがある物じゃないんですもの」

「あ、そ、そうですかすいません。

　でも、カッコイイ名前ですね」

　滞りなく进む会话に、今度は信长が、はて、と首を倾げた

「???てめー、なんも思わねーのか？」

　いや、ちょっと変わってるなーとは思うけどよ、カッコよくっていいじゃねーか」

「や、そーゆーんじゃなくて??????」