金子 隆昌 , 村上 周三 , 伊藤 一秀 , 深尾 仁 , 樋渡 潔 , 亀田 健一

参考文献16件 被引用文献4件

今日,バイオフィードバック(BF)は,医療現場において,患者の様々な症状改善の為の臨床的介入のアプローチ方法の一つとして活用されているだけでなく,スポーツ選手の集中仂向上や,自己コントロール能力向上など,競技力向上にも用いられている(Muench, 2008).本研究では,トップアスリートの心理サポートにおける,呼吸法習嘚時の即時BFの有効性について調査することを目的とした. 4名の日本代表選手を対象として,リラクセーションスキルの一つとしての呼吸法習得を目的としたメンタルトレーニングを実施した.実験期間中は,副交感神経優位ポイントの推移を可視化する為のツールとして,小型の即時BF機器, Stress it is an eraserr (米国ヘリコール社)を使用した.また,計10回の測定期間中には,アスリートの内省報告についても記録した.分析過程においては,呼吸法が実際の競技場面でどのように応用されたか,さらに,競技成績との関連性についても経過を追うことで,メンタルトレーニングの効果を検討した.結果, 4名中3名の選手(呼吸法初心者)全員に,トレーニングの進行と比例してBF期間における副交感神経優位ポイントの向上が見られた.呼吸法初心者にとっては,即時BFによって波形の変化やポイントの変化(メンタルトレーニングの効果)を選手自身が確認しながら,実際の呼吸法の動作に対して修正を加えていったことで正しい呼吸法の習得につながり,結果的に副交感神経優位ポイントの向上が見られたのではないかと考えられる.選手の内省報告からは,3名全員によって,呼吸法習得時の即時BFの有効性が示された.くわえて,本研究ではアスリートの主観嘚な評価に留まらず,定量的な側面からもリラクセーション効果について可視化したことによって,コンサルタント?アスリート双方が,スキルの習得状況を確認しながら進めていくことが可能となった.以上の結果より,トップアスリートの心理サポートにおいて,呼吸法習得時の即時BFは,メンタルトレーニングの効果を可視化する為のツールとして有効であることが示唆された